2014年8月8日金曜日

書評: ある奴隷少女に起こった出来事

奴隷だった著者による自伝。著者のハリエットは1813年生まれ。リンカーンが奴隷解放宣言をしたのが1862年なので、49歳の頃ということになる。アメリカの南部で奴隷があったことは知識として知っていても、具体的にどういうものなのか知らない人は多いだろう。僕もそうだった。

著者が、奴隷として使えていた家から抜け出し、自由を得るまでの話であるが、それまでの紆余曲折が書かれている。その時々に最善を考えて行動しているのだろうが、論理的にそう思えないところが数々あるため、小説として読んでしまうと少し辛いかもしれない。著者の実質的な所有者であるドクターフリントがストーカー気質で精神的な嫌がらせはしつくすのに、力尽くでということはしないという不思議な性格。また、著者が、祖母の家の屋根裏で7年間過ごすというのはすさまじい。実際にあったことということに驚くしかない。

奴隷の売買や相続による所有者の変更や、母が奴隷の場合は子供も奴隷になるという法律、自由州に逃げたとしても連れ戻される法律、いろいろな形で絡まり合い、読みどころの多い本である。

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